Takecの本ブログ

好きな本について。毎月『きっかけ読書会』を主宰。

アフガニスタン30年

 
『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』中村哲NHK出版)
 

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福岡県福岡市出身の脳神経内科専門の医師で、パキスタンアフガニスタンで医療活動に従事し、人道支援に取り組んできたNGOペシャワール会」の現地代表の中村哲さん。
中村さんは、医療、灌漑、用水路事業などを通して、現地住民の生活環境の改善に多大な貢献をされてきました。
その彼の生い立ち、現地での苦闘、現地の活動を通して中村さんが感じたことなどをリアルに伝えてくれる本です。
2019年12月にアフガニスタンのナンガルハル州ジャラーラーバードにて、武装勢力に銃撃されて亡くなられましたが、その偉大な功績と、彼が残してくれた深い洞察や見解、金言は本当に素晴らしいと思います。
 
現地に入り込んで動いていく行動力
真因の解決(病気の患者を診るだけではなく、その真の要因となっている水や飢餓の解決に動く)
温故知新 (日本で過去に造られた用水路を参考にして、そのやり方や技術を取り入れる)
技術の取り入れと進化
裏切られても裏切り返さない 誠実さこそが人の心に触れる、信頼を築く
人との出会いや出来事に応えていく
自然との共存
 
など
 
学ぶべきポイントがたくさんありました。
 
そして旱魃で砂漠であった大地を緑化し、現地の方々の暮らしに貢献された偉大な功績。
写真も添えられていて、とても驚き、そして感動しました。
 
この本を読んで、以下をやっていこうと思います。
 
・裏切られても裏切り返さない 誠実さを心掛けて行動する
・人との出会いや出来事に応えていく
・問題の真因を深堀して考える
・歴史を学ぶ
・技術を取り入れる
 
 
本文の内容を一部紹介します。
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様々な人や出来事との出会い、そしてそれに自分がどう応えるかで、行く末が定められてゆきます。
 
私たち個人のどんな小さな出来事も、時と場所を超えて縦横無尽、有機的に結ばれています。
 
そして、そこに人の意思を超えた神聖なものを感ぜざるを得ません。この広大な縁の世界で、誰であっても、無意味な生命や人生は決してありません。
私たちには分からないだけです。この事実が知ってほしいことの一つです。
 
現地三十年の体験を通して言えることをは、私たちが己の分限を知り、誠実である限り、天の恵みと人の真心は信頼に足るということです。
 
医療事業と並行して、飲料水源の井戸を掘り、灌漑設備の充実を進めてきた。
 
「百の診療所より一本の用水路」と唱え、この約7年間、現場に張り付いて士気を取ってきた私は、このために全てを犠牲にした。
 
このような病人に必要なのは、ともかく病を癒し、少しでも「人間」としての誇りを取り戻させることである。
 
私自ら先頭に立って、ともかく診療を強行させた。「習うより慣れろ」である。実際の診療を続けるうちに、職員たちは次第に現地にうちとけ初め、偏見が消えていった
 
時には生死を分ける場面でさえ行動を共にして、困難を切り抜けることができたのは、ひとえに誠実な人間の絆であった。
 
実際、病気のほとんどが、十分な食料、清潔な飲料水さえあれば、防げるものだったからである。
 
常々、「ペルシャワールとアフガニスタンは、アジア世界の抱えるすべての矛盾が見える」と述べてきたが、ここに最大の環境問題、温暖化による大旱魃に遭遇し、世界規模で進行する根源的な問題と対峙することになったといえよう。
 
我々に足りないのは気力と涙である。PMSもまた、心ある人々の意を体して荒野に緑野を回復し、日本の良心の気力を示そうとするものであった。
 
断固として用水路事業を完遂することであった。
 
この時の気温は摂氏52度、吹き付ける熱風、白砂に反射する陽光が目に痛い。果たしてここが緑地になるのか。もしそうだとしたら、神を心から信じよう。
 
いかに強く作るかよりも、いかに自然と折り合うかが最大の関心となった。自然は予測できない。自然の理を知るとは、人間の技術の過信を去ることから始まる
 
生活は苦しく、砂嵐、渇水、洪水に悩まされても、何かしら希望をもって働けるのだ。
自分たちの仕事が肉親や故郷を支えているという確信、はつらつとした心意気がある。
 
いまほど切実に、自然と人間との関係が根底から問い正された時はなかった。
 
大地を離れた人為の行に欺かれず、与えられた恵みを見出す努力が必要な時なのだ。
それは生存をかけた無限のフロンティアでもある。
 
私たちPMSの安全保障は、地域住民との信頼関係である。こちらが本当の友人だと認識されれば、地元住民が保護を惜しまない。
そして、「信頼」は一朝にして築かれるものではない。利害を超え、忍耐を重ね、裏切られても裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れる。
それは、武力以上に強固な安全を提供してくれ、人々を羽後欠かすことができる、私たちにとって、平和とは理念ではなく、現実の力なのだ。
 
「天、共に在り」
本書を貫くこの縦糸は、我々を根底から支える不動の事実である。
 
人も自然の一部である
 
科学や経済、医学や農業、あらゆる人の営みが、自然と人、人と人の和解を探る以外、我々が生き延びる道はないであろう