Takecの本ブログ

好きな本について。毎月『きっかけ読書会』を主宰。

天皇のお言葉と想い

天皇メッセージ』矢部宏治  (著), 須田慎太郎 (著, 写真) 小学館
 

先日、天皇陛下の即位礼性の儀が行われ、今日は祝賀パレード「祝賀御列の儀」がありました。

 
滅多にない機会なので「天皇」というテーマでやってみようということになった11月の読書会。
 
私が紹介したのはこの本です。
 

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天皇メッセージ』
 
退位された明仁上皇美智子様の言葉と、それを解釈して読み解く本。
お言葉以外に政治や戦争についての著者の意見も多いのですが、明仁上皇美智子様のお言葉と気持ちが伝わってきました。
 
特に沖縄に対する慰霊の思い、歴史を正しく知る姿勢、国民の気持ちに寄り添う優しい思いやり、平和を願うお気持ちなどが伝わってきて、心が洗われました。
 
これからも歴史を知っていくこと、苦しい人の立場に立って考えて接することをやっていきたいと思いました。
 
とてもいい機会でした。
 
 
本文の内容を一部紹介します。
ご興味のある方は読んでみてください。
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はじめに
1章 I Shall be Emperor.
2章 慰霊の旅・沖縄
3章 国民の苦しみと共に
4章 近隣諸国へのメッセージ
5章 戦争をしない国
6章 美智子皇后と共に
7章 次の世代へ
 
●慰霊の旅・沖縄
明仁天皇は沖縄にしょっちゅう来て戦没者を慰霊しているんだけど、『琉歌』という沖縄の形式で歌を詠んだりするんだよ」
 
天皇に対する沖縄の怒りは、「沖縄が本土防衛のための捨て石にされた」ことにつきるでしょう。
 
「払われた多くの尊い犠牲は、一時の行為や言葉によってあながえるものではなく、人々が長い年月をかけてこれを記憶し、一人一人、深い内省の中にあって、この地に心を寄せ続けていくことをおいて考えられません」
 
明仁天皇はその後、右の言葉にもあるように、沖縄に到着するとまず、その戦没者墓苑におもむいて祈りをささげるという、慰霊の旅のスタイルを確立されていきました。
 
●国民の苦しみとともに
原発事故によってもたらされた放射能汚染のために、これまで生活していた知識から離れて暮らさなければならない人々の無念の気持ちも深く察せられます」
 
「壊れたる 建物の散る 島の浜 物焼く煙 立ちて悲しき」(阪神大震災
 
●近隣諸国へのメッセージ
「歴史的に見てみると、日本の文化というのはずいぶん中国の恩恵を受けてきているわけですね。
中国からあるものを受け入れて、日本の文化というものが形成されてきたわけです。そういう歴史的な過程というものを十分知っておくことが、これからの中国との付き合いの基本になります」
 
「我が国が朝鮮半島の人々に多大の苦難を与えた一時期がありました。私は先年、このことにつき私の深い悲しみの気持ちを表明いたしましたが、今も変わらぬ気持ちを抱いております」
 
「・・・この過去の歴史をその後の時代とともに正しく理解しようと努めることは日本人自身にとって、また日本人が世界の人々と交わっていく上にも極めて大切なことと思います。」
 
「ここパラオの地において、私どもは先の戦争で亡くなったすべての人々を追悼し、その遺族の歩んできた苦難の道をしのびたいと思います」
 
明仁天皇は平成元年1月9日、即位後の朝見の儀
「・・・みなさんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすこと」を誓いますと宣言されています
「平和と民主主義」を大切にする現在の日本国憲法を、自分は徹底してまもっていくのだという強い決意の表明でした。
 
ここが明仁天皇昭和天皇の最大の違い
 
●戦争をしない国
「このような沖縄の歴史と深く認識することが、復帰に努力した沖縄のひとびとに対する本土の人々の務めであると思っています」
 
美智子皇后と共に
「誰もが弱い自分というものを恥ずかしく思いながら、それでも絶望しないで生きている。そうした姿をお互いに認め合いながら、なつかしみあい、励ましあっていくことができればと、そのように考えて人とお会いしています。」
 
「陛下はご譲位とともに、これまでなさって来た全ての公務から御身を引かれますが、以後もきっと、それまでと変わらず、今までと変わらず、国と人々のために祈り続けていらっしゃるのではないでしょうか」
 
●次の世代へ
人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添う
 
「沖縄の人々が耐え続けた犠牲に心を寄せていくとの私どもの思いは、これからも変わることはありません、」
 
「平成が戦争のない時代として終ろうとしていることに、心から安堵しています」
 
●あとがき
「国民の苦しみに寄り添う」「闇のない明るい天皇制」を作り出すことに成功した。それが、私たちの生きた明仁天皇の時代だったのだと思います。